Apple PencilやMagic Keyboardの登場とiPadOSのリリースでどんどん簡易パソコン化していき、扱いやすくなてきているiPad、そしてその頂点に君臨するのがiPad Proである。私もつい最近までiPad Pro 11インチの第2世代を愛用していた。実はすでに手放してしまったのだが今回はその決断に至った経緯を解説していく。
目次
現状の主なiPad Proの扱われ方
現在でのiPad Proの立ち位置を確認する前に歴代のiPad Proのことをおさらいしておこう。
iPad Pro 第1世代
スペック ※以下()内は小型版のもの
発売日 2015年9月9日(2016年3月21日) ディスプレイサイズ 12.9インチ(9.7インチ) 画面解像度 2732x2048px(2048x 1536px) SoC A9X RAM 4GB(2GB) リフレッシュレート 60Hz アウトカメラ 8MP インカメラ 1.2MP セキュリティ認証方式 TouchID 対応アクセサリ Apple Pencil(第1世代)、SmartKeyboard
初代iPad Proは12.9インチという大画面と当時としては高性能なSoC、Apple Pencil、Smart Keyboardを提げて登場した。公式で当時の持ち運べるコンピューターよりも速いことを謳っていることからもiPad Proはそれ以前から登場していたタブレット型PCのことを意識していたことが窺える。
後に同等のスペックを持つ9.7インチ型も発売される。
iPad Pro 第2世代
発売日 2017年6月5日 ディスプレイサイズ 12.9インチ(10.5インチ) 画面解像度 2732x2048px(2224x1668px) SoC A10X RAM 4GB リフレッシュレート 120Hz アウトカメラ 8MP インカメラ 1.2MP セキュリティ認証方式 TouchID 対応アクセサリ Apple Pencil(第1世代)、SmartKeyboard
ProMotionテクノロジーが初採用されたモデルで120Hzのリフレッシュレートによる高解像な画面更新(1秒間に120回画面が書き換わる)が可能。これによりApple Pencilの描き心地が大幅に向上した。
筐体自体は先代モデルとほぼ同じ。
iPad Pro第3世代
筐体のフルモデルチェンジによって非常にすっきりとした見た目になり、iPhone Xから搭載され始めたFace IDに対応。処理性能も前モデルから一線を画すレベルに仕上がっておりApple公式でもほとんどのモバイルPCよりも高速と謳うほどである。同時リリースされたアクセサリも全モデルで不評だった部分が改善されたことによりiPad Proの地位をさらに向上させたことだろう。
Face IDはiPhoneに搭載されているものとは違い、上向き、横向き、下向きを問わずに使用することができる。(よく見るとこれを実現するための補助赤外線センサーのようなものが側面にもついている)
iPad Pro第4世代
先代モデルに広角カメラが追加されSoCがA12Zにアップデートされたモデル。またA12Zチップは先代のA12Xと構造自体も全く同じであり歩留まりの問題で無効化されていたグラフィックコア1つが開放されたものである。この点に関しては厳しい意見が多く挙げられているが、最低ストレージが先代の64GBから128GBに、メモリ容量が6GBに統一されたりと十分な強化が行われた上にさらに定価自体も安く設定されている。
むしろこのモデルの真骨頂は後日リリースされた新型のキーボード一体型ケースのMagic Keyboardだろう。一般的なラップトップと同等のシザー式スイッチ(パンタグラフスイッチ)の上質なキーに加えてキーライト、物理ボタン式トラックパッド、充電用USB Type C端子を搭載した本格的にラップトップとして使える機能を盛り込んでおり、”そのコンピュータは、コンピュータの先を行く。”というキャッチフレーズを体現することができる。
ここからなんとなくiPad Proの立ち位置を考察すると、
『作画作業も兼簡易型コンピュータとしても使えるオールインワンワークステーション』
といったところだと思われる。
iPadのパソコン使いのメリットデメリット
先程の内容を踏まえた上でiPadのパソコン使いについて考えてみよう。私自身は初iPad購入以前からサブで使っていたMacbook Air 2014年モデルがあまりに非力だったことによって新しいサブ端末が欲しくなっていたが、その当時の持ち金では到底当時最新のMacbook Airを買う余裕はなかった。そこでGeekbench比較で今まで使っていたMacbook Airよりも高性能でかつリーズナブルなiPad Air第3世代を購入したことがiPadを導入したきっかけとなっている。つまり最初からコンピュータの代わりに使うことを検討していたのだ。
それからiPadをパソコンがわりに使ってきて感じたメリットデメリットをまとめると、
メリット
デメリット
メリット1 とにかく軽い
ノートパソコンといえば大抵の機種で重量が1kgを超えてくるのだが、iPadの場合はアクセサリーの編成によっては1kgを余裕で下回る超軽量モバイルパソコンになる。ノートパソコンは重ければ重いほど持ち運びの負担が増えてしまうため、いつでもどこでもiPadなら楽ちん。
メリット2 距離が近いため生産性が上がる
iPadは基本的にはタッチ操作で使うものなため当然キーボードを繋いで使うにしても使用者とかなり近い距離感になる。はっきりいってかなり姿勢が悪くなるがそれにより作業への没入感がかなり高い。またタッチ操作のおかげでいちいちマウス、トラックパッドまで手を伸ばしてカーソルをボタンのところまで持っていくという動作も不要なためいちいちワンテンポ早く作業ができる。
メリット3 パソコン以上に作画作業が捗る
もちろんiPadには別売りだがApple Pencilという強力な相棒がついている。それによりイラストやデザインの作成、マークアップなどの作業がパソコンみたいにマウス、トラックパッドを使ったりわざわざペンタブを用意しなくてもすぐに行える上に、必要なほぼ全ての作業をiPad単体でこなすこともできる。似たようなことはスマホでも可能だが画面のサイズなどの問題でそちらではあまり快適にはできない。
デメリット1 いまいち使いづらいアプリ
iPad向けに作られているアプリの中でも使用感に好みが分かれたり普通に使いづらいアプリも存在する。例えば私自身はAffinity Designerというベクタードローアプリにてキーボードショートカット前提のアプリデザインとApple Pencilの併用という操作形態の矛盾を苦痛に使用を諦めた過去がある。
また、中にはスマホ版アプリをただ大きくしただけのアプリとも付き合わなければならないタイミングも存在する。この手のアプリは大体便利なキーボードショートカットが使えなかったりポインタ操作の荒さが目立ちストレスになる。
デメリット2 アクセスできないサイトがある
iPadは上記メリットの性質上ウェブアプリケーションでの作業に非常に強いのだが、そのウェブアプリケーションの中にはパソコン版のGoogle ChromeかFire Foxでしかアクセスできないものもいくつか存在する。これによりやりたかった作業を無条件できらめなければならないことはかなりもどかしい。
デメリット3 マルチタスクに弱い
「3つのウィンドウで作業できるんだからんなわけねーだろ?!」と言いたい気持ちはわかるがiPadOSでできるマルチタスク機能は「SplitView」「SlideOver」の2つのみ、どちらも画面を分割したりiPhone風のウィンドウが表示されるという意味で表示領域の広さという弱点を持っている。当然パソコンならウィンドウサイズも自由に決めて自由に配置できる上に、やろうと思えば複数のディスプレイを接続してさらに表示領域を強化することができる。
特にサーバーなどの管理を行う際に使うFTPクライアントを使用する際は”ファイルを専用の外部アプリで編集して、編集し終えたら保存内容をFTPクライアントアプリに返してそこから変更内容をサーバーにアップロードする”という操作が現状実現できていない。そのためFTPクライアントアプリがデータ編集を含めて全て1つでこなすのだが、やはり専用アプリに任せるのとは違い、いちいち気が利いていない場面が多い。
デメリット4 無駄に投資額が嵩む
これは言わずと知れたiPadユーザー共通の悩みである。専用アクセサリーも高い、専用アプリもパソコン版よりは安くてもそこそこいい値段がする、といった感じで買った後に必要な投資でもかなりの出費が発生する。良いものを買おうとすれば余裕で3万円を超えてくるために結果パソコンでやるよりも高くついてしまうという本末転倒な事態にもなりかねないのである。
というようにiPadをパソコンとして使おうとするとすごく便利だが不便さも致命的といった感じでどのみちどこかで無理をすることになる。
そしてここからはiPad Proが私の環境からいなくなってしまった原因になった刺客2つと一般的にライバル視されているデバイスの登場して更に立場がクリしくなってしまう。
刺客① iPad Air第4世代
まずは一般的にiPad Proキラーとして知られている2020年10月に発売されたiPad Air第4世代である。SoCにA14 Bionicを採用しそれまでiPad Proの特権となっていた”フルディスプレイ””Apple Pencil第2世代対応””Magic Keyboard対応”を始めて実現した廉価グレードのiPadである。
A14チップの性能もほぼiPad Proが搭載しているA12Zと互角に渡り合える性能を有している上に価格も2.2万円やすいといったまさに夢のような性能を誇っている。
主にiPad Proキラーとして挙げられる意見として「どうせ使わないタブレットのカメラなんて1つで十分」「ぶっちゃけ120Hzのリフレッシュレートはなくてもいい」「今のご時世、顔認証なんていらない」が挙げられる。
ただしこれらの意見に対しては反論も同様に発生するため私個人的には特にiPad Proの存在意義を食えるほどのものではないという認識である。
刺客② M1搭載Macbook Air
おそらく私の環境からiPad Proが消えた1番の元凶である。iPad Proに対して処理能力、制作作業の自由度、一部だがiOSアプリが使える、キーボード+トラックパット付きで考えるとコスパで優れる、といった感じでApple Pencilを使った作業、120Hzのリフレッシュレート、クアッドスピーカー、といった点に目を瞑れば実質的に上位互換みたいな存在となってしまっている。更にサブPCというiPad使用期間中ずっと空席だったところにまで踏み込むことができたことが私の環境では鬼に金棒となった。
もちろんパソコンなためiPadで作業していた頃に諦めるしかできなかった作業も全部こなすことが可能なためiPad Proと購入を悩んでる方に相談されたら私ならよほどの理由がない限りこちらを選択するであろう。
刺客③ Samsung Galaxy Note20 Ultra
そしてトドメをさしたのがGlaxy Note20 Ultraである。Macbook Airではどうしても作画作業での優位性でiPad Proに劣るものがあるが、こちらなら専用のスタイラスが付属してかつそこそこな大画面を有している(所詮スマホサイズ)ので多少はMacbook AirとiPad Proの入れ替えで発生するデメリットを補うことができる。
ただしAndroidといえばクリエイター向けアプリが極端に少ないため本格的に使えるアプリも実質CLIP STUDIO一択。
iPad Proの今後の立ち位置、希望
さてこれらの登場により私の環境で居場所を失ったiPad Proだが、私自身はオワコンだとは思っていない。なぜならiPad Proにはまだまだ他にも魅力が溢れるデバイスだからだ。
例えばYouTubeなどの動画を見るときもどんな姿勢でも気楽にいつでも取り出してクアッドスピーカの迫力ある音とともに動画視聴する体験は忘れられないものになるだろう。気軽に手にしていつでもどこでもスマホ以上に快適なウェブサーフォンもできる絶妙な携帯性はパソコンでは到底真似もできない。
近年のスマホほどでないにしても優秀なカメラを2基搭載していることにより写真撮影から編集まで、動画撮影をしてそのまま編集してから動画サイトにアップロードをたった一人でこなせてしまう、結局嗜好品だが優秀なガジェットであることには間違いない。
現状はパソコン運用だとどうしても無理があるが、今後リリースされるだろうアップデートでよりパソコンに近付いていくiPad Proの成長をこれからも見届けていきたい。
まとめ
iPad全般並びにiPad Proについて語ったところで今回の記事をまとめると、
- iPad Proは最強のエンタメマシーン
- パソコン使いにはまだ向いてない
- パソコンとして使うならM1 Macbook Airを買え
またいつかiPad Proと再開できる日を夢見てこの記事を締めくくろうと思う。